筋トレを行う上で大切な栄養素にはたんぱく質をはじめ、BCAA(分岐鎖アミノ酸=バリン・ロイシン・イソロイシン)、グルタミン、筋トレ後の糖質など様々あります。
中でも筋肉づくりを効果的に進めるために欠かせない栄養素にクレアチンというアミノ酸の一種があるのをご存じでしょうか?
筋トレ経験がない方や、まだ筋肉づくりを始めて期間が短い方にはなじみが薄い栄養素かも知れませんが、効率的に筋トレを行う上では大切な栄養素の一つなのです。
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「クレアチンの効果的な摂取タイミング」
クレアチンの特徴と効果
クレアチンは、筋肉づくりの王道でもあるプロテインと比較すると知名度としては決して高いものではありません。
しかし、アスリートや徹底した体づくりを行う人にとっては、プロテインに並んで重要視され、欠かすことができない栄養素でもあるのです。
サプリメントメーカーでもあるDNSによると、近年のオリンピックメダリストの75%が使用しているというデータもあり強靭な体、筋肥大をサポートするサプリメントとして研究で認められている栄養素です。
瞬発的なパワー発揮効果
クレアチンの効果でメインとなるのが、瞬発的な力を発揮する能力を高めるというもの。
まず、クレアチンを摂取することで、筋肉に筋トレ時などに使用するエネルギーを貯蓄することが可能となります。
クレアチンが関与するエネルギー供給機構は『ATP-PCr系』と呼ばれるもので、これは瞬発力が求められる運動の時に使用される供給機構です。
一般的には強度の高い筋トレ時に必要となるATP-PCr系は非常に高いエネルギーを生み出すことが可能ですが、一般的に約6秒~8秒程度でエネルギーを供給できなくなるとされています。つまり、100mなどに代表される短距離競技では全速力に近い状態で走ることができますが、それ以上になるとエネルギーの供給がストップするため、パフォーマンスが落ちてくることになるのです。
しかし、クレアチンを摂取することによりこのエネルギーを多く蓄える(筋肉中のクレアチンの量を増やす)ことができ、これにより瞬発的なパワー発揮の延長が可能となり、より強度の高い筋トレが行えるようになるというわけです。
例えば、クレアチンを摂らずに行ったとき10回が限界だったのが、摂ることで12回できるようになるなど、力発揮の面で顕著に効果が現れます。
もっとも、摂らなくても漸進性の原則に従って負荷・強度を高めていけば、いずれは10回が12回に増えるようなことは当然にして起こります。
しかし、クレアチンを摂ることでその発達速度に差が出てくることになります。
1ヶ月で12回できるようになるところを、クレアチンの摂取により、2週間で可能となる。そのような効果が期待できるのです。
それにより、12回に達したときは重量を上げて、再び10回が限界の重量にすることで、トレーニングの仕事量を効率的、かつ効果的に増やすことができ、結果として筋肥大効果を高めることができます。
言うならば、プロテインが筋トレによって刺激された生理学的反応にアプローチするのに対して、クレアチンは直接的に身体的なレベルアップを図ることができるものであると言えます。この場合、筋トレ中の力発揮に貢献することになります。
ちなみに、クレアチンは、パフォーマンスの直接的な向上に寄与する「エルゴジェニックエイド」に属し、プロテインなど筋トレや日常において不足する栄養を補う「ダイエタリーサプリメント」と効果の出方に明確な違いがあるのも特徴です。
筋肉増量にも効果的なクレアチン
クレアチンは筋肉づくりを行う上では重要な成分の一つでもありますが、勘違いしてはいけないのがクレアチンそのものはプロテイン(たんぱく質)のように筋肉の材料になるわけではないということです。
それではなぜクレアチンが筋肥大に効果的なのか?
その理由については前述のようにクレアチンはパワーをアップさせる働きがあるため、これによりハードな筋トレを行うことが可能となります。
つまり、摂らない場合に比べて筋トレの負荷を高めることができ、より筋肉に過負荷をかけやすくなるということです。仕事量が増えることで、より強い刺激を筋肉に加えることができるというわけですね。
これを積み重ねることで結果的により早く筋肥大を促すことができのです。
優れた疲労回復効果も持つクレアチン
クレアチンには疲労回復効果もあるとされており、主に『抗炎症作用』と『抗酸化作用』の2種類の働きが期待できるとされています。
抗炎症作用は組織の痛みに対してアプローチをかけることで、筋肉の回復や修復をスムーズに行うことが可能になります。これにより、「筋トレ→回復・修復→筋肥大」サイクルの効率化が可能になり、体づくりの循環を加速させる効果が期待できます。
また、抗酸化作用に関しては、筋トレ時など激しく体を使用した時に生み出される活性酸素の働きを抑制する効果があります。活性酸素は疲労の原因ともいわれており、この物質が体内に蓄積されることで筋肉の回復も遅れるといった弊害があります。
クレアチンはこの活性酸素の活発化を阻止する働きがあることから、疲労を低減でき常に質の高い筋トレを行うことが可能になるというわけです。
クレアチンはプロテイン(たんぱく質)と併用してこそ力を発揮する
筋トレの質を高める上で欠かすことのできないクレアチンですが、前述のようにクレアチンは直接筋肉の材料となるわけではありません。あくまでも筋トレのパフォーマンスのアップ、筋繊維の回復・修復をスムーズに行う効果がメインとなります。そのため、クレアチンだけを摂取しても筋肥大は起こらず、筋肉の材料となるプロテインと並行して摂ることが大切になります。
クレアチンは力発揮の面でサポートするアミノ酸であることから、筋肉の材料になるたんぱく質を摂らなくては筋肥大のスイッチはONになりません。
クレアチンはプロテインや食事からの十分なたんぱく質摂取があってこそ、能力をいかんなく発揮できるサプリメントであることを認識しておきましょう。
クレアチンを摂取する際の注意点はあるの?
クレアチンは魚や肉などの食品にも含まれている栄養素であるため、薬のような副作用は一般的にはありません。
ただし、クレアチンには筋肉内に水を引き込む作用があり、水分補給が足りていないと各組織の水分量が適切に保たれなくなる可能性も指摘されています、そのため、クレアチンを摂っている間は、こまめに水分補給することを心がけましょう。
また、クレアチンはオレンジジュースなどの酸やコーヒーなどに代表されるカフェインに対してはその成分を変化させてしまう性質があります。極力これらの成分が含まれる飲み物と一緒に飲むことは避け、クレアチンを飲む時は酸やカフェインが含まれていない水やプロテインと一緒に摂取するようにしましょう。
クレアチンは溶けにくいので、口の中に粉を入れたあと、水などで流し込む飲み方がおすすめです。
クレアチンの過剰摂取によって引き起こされる症状は、胃腸の弱い方だと腹痛の可能性があるとされています。仮にクレアチンを摂取して腹痛が起きた場合は、用量を減らし小分けに摂取することで改善されることもあります。このような対策法も万が一の時に備えて覚えておくといいでしょう。
通常はマイナスに働くことはありませんので、より良い筋肉づくりを目指している人は、クレアチンを取り入れてみて下さい。
筋肉の育ちが思うように進まない場合やプラトー(成長の停滞期)の際に壁を突破する上でも役立つことになるでしょう。